還り着く場所(24)

「ジャンヌ……どこか辛かった……ですか?」

とうとう両手で顔を覆って嗚咽し始めた少女に、青年が気遣わしげな表情で声をかける。
声の様子から相手の不安を感じとり、ジャンヌは頭を振ってそれを否定しつつ、とめどなく零れ落ちてくる涙を必死に指で拭う。

「違うんです。
ただ……嬉しくて……幸せ過ぎたら、何だか色々思い出してしまって」
「……ジャンヌ」
「ジル……昔、シノンで私が広間にやって来た時、貴方は『光が見えた』と言っていましたね」

ふわりと、はにかんだ笑みを浮かべながら、少女が『その時』の事を初めて告白する。

「あの時、私もあの場に集まった沢山の人達の中に、一際大きな輝きを見つけたのです。
私は『神様』から魂の本質そのものを視る力を与えられていましたから、その輝きの持ち主が、この世界で何か役目を与えられている偉大な方であると、すぐに分かりました。
だから、この方こそきっと王太子様なのだと、思わず嬉しくなりました。
もっとも、すぐに『それは違う』、と『神様』に否定されてしまいましたけれど。
実際の王太子様は、広間でもう少し控えめに澄んだ光を放っている方でした」
「……それは、まさか……」
「ええ、私が広間で一番最初に見つけた光──それが貴方です。
本当に最初から、私達は互いの事が気になっていたんですね」

少女と初めて目があった時──微笑まれたのは決して気のせいではなかったのだ。
彼女は広間に足を踏み入れたその時から、ジルが異質であると気が付いていた。
またそれ故に、フランスを──延いてはこの世界を守る為に、大きな役割を果たす誰かと成り得ることも。

「いえ……さすがにあの時はそこまで私も『神様』のお考えを読み取る事は出来ませんでした。
ただ、どこか私と似ている力を持つ方がいらっしゃるのが嬉しかったんです。
引き合わされた貴方は、本当に魂の輝きがそのまま現世の器として形作られているような方で、私はすぐ好きになってしまいました」

明け透けな少女の言葉に、ジルは少し照れたように視線を逸らし、頬を掻く。

「貴方は軍属の方とはとても思えないほど聡明で優しくて。それでいて戦場では誰よりも強い方でした。
この方は『神様』が私を助ける為に遣わして下さった天使様なのではないかと、最初は本気で思っていました。
でも、だからこそ苦しかった」
「苦しい……?」

ジャンヌの口から出た意外な告白に、ジルが思わず聞き返す。

「貴方はじゃじゃ馬な私に影のように寄り添いながら、常に誠実で、紳士として振る舞って下さいました。
戦場や軍議の時はもちろん、夜、二人きりの時でさえ」

どこか悲しげな響きで、ジャンヌは言葉を紡ぐ。

「オルレアンから戦ってきたジャン、アランソン公、ラ・イール隊長、リッシュモン伯──みな、かけがえのない仲間で、本当に大切な人達です。
誰一人、欠けてもあの奇跡は起こせなかったでしょう。
ですが、ジャンや公爵達に対する『好き』と、貴方に対するそれとは明らかに違うと、私は気が付いてしまいました。
私は『神様』に生涯を捧げる誓いを立てていたのにも関わらず、人を、決して好きになってはいけない男性を愛してしまったのです」

人々を導く聖女としての役目を期待され、また自身もそうあるべきとして神の定めた運命に従ってきた彼女にとって、それは己の存在理由を揺るがす一大事であった。
この創造主や彼女に救いを求める人々への裏切りとも言える感情は、彼女に途方もない罪悪感を背負わせる事になり、果たすべき使命との狭間で己がどうあるべきか、大いに悩ませることになったのだった。

「その方は妻子ある大貴族で、とても私のような後ろ盾の無い小娘とつり合いの取れる方ではありません。
この道ならぬ恋を実らせるのは端から無理だと分かっていました。
だからせめて……戦場に居る間だけでもいい。
一夜の過ちで構わない。
いっそ、貴方から私をただの女にして下さらないかと……そんな浅ましい期待すら抱くようになっていました」
「………………」

それはずっと聖女として祀られてきた少女が、その心にひた隠しにしてきた闇であり、儚くも愛らしい人間としての感情だった。
ジルと同じかそれ以上に、少女は自らの想いの重さに苦しんでいた。

「でも、貴方は他の殿方と違って、いかなる時も騎士である自分を崩しては下さいませんでした。
貴方の清らかさや落ち着いた佇まいが眩しくて、余計に自分が惨めで……このまま苦しみ続けるなら、軽蔑されて貴方から離れた方がいいと……ランスであんな真似を……」
「……そう……だったのですか……」

まさか、それほどジャンヌが思い詰めていたとは。
あれほど傍に居ながら、思い至らなかった己の余裕のなさが改めて憎らしい。
しかし、悩み抜いた末、戦場であれほど凛々しく振る舞っていた少女が見せることになった、精一杯の『女』としての勇気。
それが結果として二人を結びつけ、少女もジルも救ったのだ。

「私ばかりが苦しんでいるようで悔しくて、思わず仕出かした行動でしたが、貴方もずっとずっと苦しんでいたのが分かって……ごめんなさい、私、凄く安心したんです。
貴方が天使様ではなく、私と同じ人間だった、という事が分かって。
それからますます貴方が大好きになりました」

自分を覗き込んでいる美貌の輪郭を愛おしげに指でなぞり、ジャンヌが表情を綻ばせる。
艶やかでありながら、温かく慈愛に満ちて、包まれるような安らぎを与えるその笑顔。
青年にとって何よりも大切な奇跡の光。

「だからどうか……今夜は最後まで私を愛して下さい……」
言葉が終わるか終らないか分からないうちに、ジルの口付けが少女の珊瑚色をした唇を塞いでいた。
ここまで思われて、ジルの中の男が奮い立たぬはずもない。
「──ええ、言われずとも」

微笑み返してから、また深く口付ける。

ジャンヌが愛おしくてたまらない。
もう、誰にも奪わせてなるものか。
彼女の全ては、自分のものだ。
そして、この身の全ては彼女のもの。
互いが互いのものであり、だからこそ一人では欠けたままの部分を満たしたくて、魅かれあい、求めあう──

「あ……んんっ」

再びジャンヌの足を下から押し広げるように開かせると、その狭間にジルは顔を沈める。
さらさらと内腿を撫ぜる青年の髪の感触に、少女が身動ぎをする。

「ジル……そんな、恥ずかしい……」

享楽に蕩け、柔らかく解れ始めた少女の女の部分、その全てがよく見える。
愛する人の最も繊細で敏感な部分。ジルはその花の中心にある尖りにそっと口付けた後、甘く唇に含み、吸い上げた。

「ああ……っ!」

経験の未熟な少女に耐えられるような刺激のはずもなく。つま先まで身体を張りつめさせ、震わせながらジャンヌが啼く。
女に深い快楽を齎す花芯を存分に愛撫した後、不埒な舌の持ち主は、ぴちゃぴちゃと濡れた音を立てながら溢れ出る蜜を飲み下す。

「あ、そこは……やぁ……あ、ジル、ジル……ッ!」

白い喉を仰け反らせ、ジャンヌが抗い難い肉の悦びに身悶える。乱れた呼気に合わせ、形の良い胸が淫靡に踊った。
直接的な奉仕と、いやらしく響く水音が否応なく彼女の羞恥心を煽り、背徳感と反比例するように快感は高まっていく。
執拗に這い回る舌は少女の官能をひき出し、ジャンヌの意志とは関係なしに熱く瑞々しくその胎内を火照らせ、止まることなく秘所から蜜を滴らせた。

──ああ、これは。

舌から頭頂へと突き抜ける、その甘露から己の咥内へと広がってゆく絶妙の味わいにジルは陶然とする。
それは、初めて師父に人の血の味を覚えさせられた時にも似た、絶望と隣り合わせの幸福感。
一度知ってしまったら、二度と忘れられない。後戻りが許されない禁忌の道へと誘う美酒の味。

戦場で血の匂いを嗅いでいる時ですら、ここまで肉体的な高揚を覚えた事はなかった。
これが彼女の命の味か。

抑え込んでいた捕食者としての本能が、首をもたげはじめる。
花弁全体を舐め上げ、少女の奥から溢れだす愉悦の蜜を一滴も逃すまいと、青年の舌先はまだ慎ましさを残す花弁に守られたその奥にまで挿し込まれる。同時に、花弁に沿わせた指が、濡れそぼったそこがよりジルを受け入れやすくなるように、ゆっくりと舌に続いて少女の中へと分け入った。

「…………っ!」

ゆっくりと良い部分を探りつつ、内を広げるように擦り付けながら、ジルの指が少女の中を行き来する。

「ああっ、んっ」

異物感に馴染むよう、潤んだ柔襞を解しつつ、零れ落ちる蜜を撹拌する。
指とはいえ、とうとう己の聖域へと愛する者の一部を迎え入れた事実に、ジャンヌが感極まった声を上げた。

「はぁ、あああ……」

そこは……なんて熱く狭いのだろう。
僅かに接した部分から伝わってくる感触だけで、ジルは思わず喘ぎにも似た溜息を洩らしそうになる。本当に彼女と繋がった時、一体どれだけの快楽が得られるのか──少し想像しただけで、下肢の中心がズキリと痛みに近い疼きを覚えた。

指だけは冷徹に敏感な部分を攻め立てながら、身も世もなく少女の身体を求めてしまいそうになる衝動が、ジルの全身を支配しかける。
彼女の全てを感じたい。その情熱的な身体に屈服してしまいたい。
ああ、一つになったのなら──すぐにでも達してしまいそうだ。

「ジル……ッ、待って、お願い……」
熱に浮かされた耳朶に、ジャンヌの切羽詰った声が響く。
「早く……貴方も……一緒にっ……」
切なげな声が、最後の解放を求めて、青年の慈悲を乞う。

熱い吐息が漏れると共に、彼女がジルの指をきゅっと締め付ける。まるで「もうこれでは足りない」と訴えるように。
巧みな指使いは素直な少女をより貪欲にさせていた。
熱い粘膜は少女の呼吸や身動ぎに合わせて、ジルを奥へ奥へと誘うように波打ち、今や胎の中と本能を満たすものを狂おしい程に待ち侘びている。

「ジャンヌ……」

決して早い方ではないと思うが、己もさすがに限界が近い。
しかし。少女の中を愛でる指は二本に増え、擦り付ける場所によっては彼女も気持ち良さを感じ始めている様子が見て取れたが、それでも己の剛直を処女地に突き立てるのにジルは躊躇わずにはいられなかった。

──最後に女を抱いたのは何時の話だっただろう。
生きている年月の分だけ、当然のごとくジルの経験数は豊富に過ぎるほどであったが、皮肉にもその場においてはもっぱら『抱かれる』側である場合が多く、己の記憶が確かならば、相手が女性にしても生娘を相手にした事は一度もなかったはずだった。

昔、ラ・イールが初対面のジャンヌに向かって傭兵特有の軽口でジルの逸物について揶揄した事があったが、まんざら嘘でもないのが自分でも居た堪れなくなってくる。
それこそ何かにつけては、「奥方は最初の晩、さぞ泣かされたんだろうな」(実際は一度も抱いた事はなかったのだが)、「娼館でも初物は絶対抱いてやるなよ。その顔に騙されて相手させられた日には、可哀想に、しばらく仕事が出来ないぜ、その娘」等と豪快に笑いながら傭兵隊長はジルを渋面にさせたものだった。

とはいえ、ここにきて彼女の想いに応えないのは、野暮にも過ぎる。
彼女はジルが己の欲望に正直になるだけ喜ぶのだから。

「……痛かったら、すぐに言って下さいね」

果たして、こんな状態で加減が出来るかどうか危うさを覚えつつも、少女の耳元にそっと囁いた後、期待と不安が息づくその場所へ猛ったものを宛がう。
物欲しげにひくついている入口に押し当てられたものの圧迫感に、さしものジャンヌも息を呑んだ。

長身ではあるが、女の自分ですら嫉妬したくなる中性的な美貌の持ち主であるジルの身体は、常に人間離れした空気を纏っており、整い過ぎた容姿は一見、人の体温を全く感じさせない彫像めいた印象を見る者に与える。
今、少女と肌を重ねている均整のとれた白い裸身も、飾る物一つなくとも奇跡のような麗しさだが、奥へと通じる敏感なそこに触れている一点だけは、隠しようもなく熱く滾って濡れそぼり、彼が『雄』である事を主張していた。
だが、不思議とジャンヌは、そんな完璧な調和を見せる美の中で生々しく蠢く、取り繕ったところのない剥き出しの男の部分に、力強さと愛おしさを感じていた。

「ん…………っ!」

肉の杭が、少女の聖域を穿つ。

遠い昔、屈辱と共に味わった、身体を内から引き裂かれるような痛みに、ジャンヌの身体が強張る。
自ら望んだにも関わらず、あまりの痛みと衝撃の大きさに、恐ろしくて繋がっているであろう部分を直視出来ない。
ぎゅっと閉じられた瞼からは涙が零れ落ち、浅く荒い呼吸を繰り返す唇からは、いくら堪えようとしても抑えられない苦鳴が漏れる。

「うぅ……ああ……っ」
「く……っ……ジャンヌ……ッ」

残酷だが、どんなに愛しい人が相手でも、自分が女で相手が男である以上、初めて繋がる時の辛さは変わらない。
それでも。ずっと近くて遠い場所にいた二人にとって、この儀式は本当に特別で尊いものだから。
彼女は彼の全てを受け入れたくて、己を開かれていく痛みに耐えた。

「っ……は、ジ、ル……」
「ジャンヌ……」

見かねた青年が、少女の中から自らの半身を引き抜く。
圧迫感から解放され、ジャンヌの身体は安堵の息を吐くが、同時にそれ以上の喪失感と悲しみが彼女の心を襲う。

「ジル……駄目……ッ、抜かないで……」
「……ですがジャンヌ、これ以上、貴女に痛みを与えるのは私も苦しい」

目に涙を溜めて訴えるジャンヌに、自身も辛そうな顔でジルが応える。

「これからはずっと一緒です。少しずつ、互いの身体を馴染ませていけばいい。
時間はいくらでもあるのですから……」

少女に無理をさせないよう、大人の自らが退かねばならぬと判断したのだろう。
ジルの口調と、少女の頬を撫でる手付きはあくまでも優しい。
大きく息を吐き、少女の上から身を起こす。
とはいえ、高まりゆく快楽への期待を中断され、それが発露する場所を失った彼の身体は明らかに余裕があるとはいえず、必死で己の中の獣が暴走しないように抑えている様子がジャンヌには見て取れた。

──やはり、諦めたくはない。

「いや……です」
「ジャンヌ……でも」
「もう……これ以上待つのは嫌です……今度こそ、今夜こそ貴方に私の処女を捧げたいのです……お願い、ジル」
「…………」

ジャンヌは理解している。
目の前の青年が自分と出会った時点で、とうの昔に女を知っている事を。
だが同時に、心から満たされる繋がりを持ったことがない、という事も。

貴族の嫡子は物心ついた時から、将来家長となる為に必要な徹底した子弟教育を受け始める。それには当然跡継ぎを残す為の性交渉も含まれる。
まだ希望と理想に燃える聖職者の卵でもない限り、あの時代の一人前の男が童貞を保っているはずもなく、いくら世間知らずの田舎娘とて、騎士という存在にそこまで夢見て生きてはいない。

しかし、愛から始まった結婚ではなかったとはいえ、妻となった女性から拒絶され、あまつさえ実の弟に裏切られた挙句、最も憎い魔術師に蹂躙されたこの人の男性としての誇りを、これ以上傷つけたくない。

──一度は炎の中で燃え尽きたこの身。血を流すことぐらい何でもない。
──だって、私は、この人をどうしようもなく愛しているのだから。

しなやかな腕に縋りつくと、ジャンヌはジルの上体を押して、そのまま彼が仰向けに横たわるよう促す。
ここまでジルの愛撫に身を任せるままだった少女の動きを見て、青年の顔に戸惑いの表情が浮かぶ。

「ジャンヌ……?」
「ジル……そのまま……動かないで下さいね……」

言って、少女はそのまま膝立ちになりジルの腰の上に跨ると、恥じらいながら彼の屹立した雄の証に白い指を添え、自らの秘唇に導く。

──ああ、なんて熱くて逞しい。

その脈打つ肉の切先を、今も法悦の蜜が滴り落ちる媚肉に押し当てると、腰の奥がぎゅっと切なくなるような感覚が襲い、思わず鼻にかかったような甘い吐息が少女の唇から漏れ出る。

「……ジャンヌ……」

男の欲望そのものを自らの秘所に迎え入れながら恍惚とする、およそ穢れというものと無縁だった聖女の妖艶な姿に、ジルの興奮は頂点に達する。
見上げるその光景は、まさに『あの時』夢想した──

「……どうせ、痛みを感じるのであれば……一息に……ッ」

大きく息を吐いた後、覚悟を決めたジャンヌが、腰を落とす。
体重がかかる勢いそのままに、ジルの滾った杭が少女を貫き、柔襞を押し分けまだ硬さを残す女陰の奥へと呑み込まれる。

「あああ……ッ!」

あまりの衝撃に一瞬、身体がみしりと音を立て軋む錯覚をジャンヌは覚える。

「う……っ、あ、すご……太くて……なかいっぱいに……」

思わず男の興奮を煽る露骨な言葉が口を吐き、自身の言葉に少女は頬を更に紅潮させる。
しかし、最早今の彼女にとって羞恥心はより強い快楽を齎すだけの呼び水にしかならない。
最も深い場所まで一気に身体を抉じ開けられ、身体が内側から爆ぜてしまいそうな痛みに耐えながらも、彼女は確かにそれ以上の充足感を全身で感じていた。

──やっと、やっと私は貴方のものに。

念願叶い、欠けていた魂が満たされるような感動が、艶めく少女の裸身を震わせる。幸福の波は繋がった部分から全身へと伝播してゆき、その精神的な喜びは、そのまま肉体の興奮と法悦へと変換されていく。
自らが銜え込む男の形を感じながら、胸の奥から込み上げてくる愛しさと、開花した女としての本能的な欲求に、少女は必死に繋がった青年の名を呼ぶ。

「ああ、ジル……ッ、ジル……ッ!」
「ジ、ジャン、ヌ……う……く……っ……あっ……はぁっ……」

ジャンヌの腰を支えるジルの手に力が篭る。
健気にも身を震わせながら己に縋りつくジャンヌを少しでも優しく慰めてやりたいが、彼女の最奥に達したジルの方も、急激に膨れ上がる官能に理性が蒸発しないよう、肩で息を吐きながら、快楽を逃がそうとするので精一杯だった。

清純そのものの容姿とは裏腹に、聖女の禁域は男を堕落させる淫らな花園だった。
媚薬のごとき愛欲の滴が湧き出す蜜壷は、男の欲情に劣らぬほど熱く潤い、ただでさえ狭いそこは、吸い付くようにジルの半身を包み込み、その逐情を促すように、ただひたすら奥へ奥へと巻き込み、締め上げる。

「ジルッ………も、わたし、おかしくなって……あんっ」

挿入の興奮も冷めやらぬまま、ゆるりとジャンヌが腰を前後に動かし始める。
恋い焦がれた人に女にされた純粋な嬉しさと、またその人を確かに自分のものとした昏い愉悦に、少女は身を捩じらせる。

もっと、もっと貴方を感じさせて──

脇をしめることで強調される乳房。吹きかける吐息すら感じてしまうほど敏感になった先端の突起は、今もツンと硬く張りつめている。そのしっとりと汗ばんだ豊かな膨らみが目の前で揺れる度、溶け合った接合部からは濡れた音が響き、その水音に煽られるように、少女の身体は大胆になっていく。

「あっ、あっ、あっ……いいっ……ジルッ……も、とまらな……っ」

すっかり本能に従順となり、官能の虜となったジャンヌの動きが激しくなる。
髪を振り乱し、大きく上体を反らせ小刻みに腰を突き上げながら己の快感を貪り、ジルを攻め立て翻弄する。

「ジャンヌッ……、ジャンヌ……ッ」

目の前で愛欲のリズムを刻みながら踊る少女の姿は、視覚的にも強烈な刺激となってジルの正気を揺さぶっていく。
一糸まとわぬ姿でジルに跨り腰を振るその様は、ジルがシノンでジャンヌと出会った時幻視した光景そのものだった。
悩ましい女体からは戦場にいた彼女の姿はまったく連想出来ず、さながら薄桃色した霧の中に霞みはじめた思考には、今展開される全てがまるで夢の中にいるように感じられる。

しかし、解放を求めて膨張し続ける己から精を搾り上げるように収縮する熱い粘膜の感触が、これが紛れもない現実だと何より雄弁に語っていた。

「あ、あんッ……ンンッ、ジル、わたし……」
「ジャ……ンヌッ」
「きもち、いっ……きもちいいの……んッ」

切なげな声を上げながら、それでいて官能に対する貪欲さは留まることなく、抑えどころを知らない少女は、ジルの腰に手を添えて今度は身体を上下に弾ませる。
若い男では到底堪えようもない甘美な感触が、ますますジルを追い詰め、彼の眉間の皺を深くする。
足を開いたまま激しく抽挿を繰り返す箇所は丸見えで、蜜を刷り込まれるようにして扱き上げられる快感と、ジャンヌの中を撹拌する音、それら全てが合わさって、ジルの呼吸を荒くさせ──とうとう下から少女を突き上げたい欲求を抑えられなくなってしまう。

「ああんッ……!」

青年の力強い律動に少女の身体が跳ね上がる。豊かな胸にジルの手が伸び、荒々しく鷲掴みにすると、弧を描くようにして揉みしだく。
そして欲望の赴くまま、何度も激しく彼女に向かって己自身を打ちつけた。

「ジルッ、ジルッ……」

彼女の望みに応えるジルの動きが鋭く官能を揺さぶり、ジャンヌは内から滲み出る女の悦びと幸福感に意識を朦朧とさせながら、譫言のように彼の名を繰り返す。健気な様子とは裏腹に、彼女の中はひたすらに快楽の頂点を求め、男を逃がすまいと波打つような動きで彼を極みの瞬間へと誘う。

「ジャンヌ……ッ……」

神経を焼き焦がすような暴力的なまでの快楽に、繋がった部分から自身がドロドロに溶かされて、彼女に吸い尽くされてしまいそうな予感がジルの脳裏を過ぎる。
しかし、それすら是としてしまう愛する乙女への屈服と、彼女を独占している征服感が、背徳的な興奮と満足を伴って、ジルを縛っていた最後の箍を外した。

とりわけ大きく突き上げたそれが少女の最奥へ達すると、示し合わせたかのように彼女がジルを締め上げ、抑え込んでいた熱い奔流がジャンヌの中で弾ける。
叫び出したくなるような解放感に、頤を上げ身を震わせながら青年が呻き、叩きつけるものの勢いに少女も身体を強張らせ、一瞬意識が真っ白になる。

「ああ、ジル……ッ、ジル……」
「ジャンヌ……私のジャンヌ……愛してます……
貴女は私だけのもの、私も貴女だけのものだ。
永遠に……離さない……」

ジャンヌの腕を引き、身を起こした青年が今まさに妻となった少女の唇を奪う。
舌を射し入れ、呼吸を吸い上げ、喘ぐ少女の口腔へ唾液を流し込む。
少女もまた媚薬のようなそれを喉に受けながら、己の舌を青年のそれと絡める。
飽く事のない口付けは、一度果てたばかりにも関わらず、二人の中にまた痺れるような疼きを蘇らせる。

ジルは甘い余韻に陶然とするジャンヌをそのままベッドの上に押し倒し、体制を入れ替えると、今度は自分が彼女に覆いかぶさる形をとる。

「……嬉しい……私も貴方が大好きです……
ジル……私の騎士様……」

愛する人に全身で求められて、少女がふわりと心から満たされた微笑みを浮かべる。
青年もまた優しく微笑み返す。

少女の嬌声が再び夜の静寂に響いた。

夜は長く、二人の昂ぶりはまだ収まらない。
愛を確かめ合う甘くも激しい睦みあいは、その後も互いの官能の炎が燃え尽きるまで続いた。

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